天竜の植林の歴史は、この人なくして語れない。
日本で有数の森林である静岡県西部地方の「天竜美林」に貢献した人物、金原明善。
天竜川西岸の豪農の家に生まれた金原明善は、水防の必要性を説き明治7年(1874)天竜川治水事業に私財5万6千円余を投じた。「植林に投資するのは銀行預金と同様であり、倹約によって生まれる」という持論もあった。
やがて治水事業は、国の直括事業になり、明善は「治水の基は水源涵養林にある」と林業に転じ、官有林にスギ249万本、ヒノキ49万本を献植し並行して隣接山林にも植林をしたという。また、金原明善も、作業員の人たちと一緒に山小屋で暮らし、率先して苗木を担ぎ、急斜面に一本一本植えてきたという。